Under My Skin/Avril Lavigne

男の子のようなダボダボのパンツを穿いて、スケーターを乗り回し、
ギターを掻き鳴らして女の子の自立を叫び、セクシーさを売りにするアイドル達を糾弾して、
ティーンから熱い支持を受けてきたアヴリル・ラヴィーンだったが
このところそういったファンが、少なからず疑問を感じ始めている。
髪の毛を巻いてみたり、胸元を強調するようなドレスで公の場に登場したり、
クラブ・ホッピングにいそしんで、”パーティ好きな有名人”ランキングで4位に選ばれたり。
デビュー当時のボーイッシュな様相は影を潜め、立派なセレブへと変身しつつあるからだ。

わかっている。これはあくまで音楽評論であって、アーティストの私生活に口を出す趣旨のものではない。
しかし、彼女のパーソナリティこそが、その人気の大きな部分を担ってきたからこそ
この話は決して避けて通ることはできないだろう。

このアルバムに関連して、個人的に評価したい点と残念な点がひとつずつある。
前者は、ライブ・パフォーマンスを実際に目の当たりにして、
ファースト・アルバムの時期から格段にレベルアップしたのが感じられたこと。
生放送ではぎこちなかったボーカルが安定し、声量がはるかに大きくなった。
これまで人前で演奏する、とまではいかなかったギターやピアノを弾いてみせ、
アンコールではドラムさばきまで見せてくれる成長ぶりである。
これらは長く続いたツアーの賜物だろうし、本人の努力を純粋に褒めてあげたい。
アーティストとして良くも悪くも貫禄がついたということだろう。
後者、残念な点は、予想通りの展開であるとはいえ
アルバムの方向性がダークでヘヴィなものになってしまったこと。
ポップ・アイドルを演じろと言いたい訳ではない。しかし彼女の声質を考えると
カントリー風味の爽やかでちょっとせつないポップ・ロック、
まさにファースト・アルバム「Let Go」(特に後半)の雰囲気が一番合っていると思うからだ。
前作のイメージを引き継いだ曲も収録されているとはいえ、
アートワークも含めて、反動的に重苦しいイメージに持って行ったのは勿体無いの一言に尽きる。

ただ、やはりアーティスト本人のやりたいようにやるのが一番であるし
実際彼女もこのアルバムの出来にすこぶる満足しているようなので、音楽性に関してはこれ以上言うまい。
結果的にファースト・アルバムとセカンド・アルバムで雰囲気が変わってしまったことも
今でこそ世界的な人気を得て、望みどおりの布陣を召集することが可能になったとはいえ
デビューする前は何のバックアップもない田舎出身の17歳。
そんな女の子を、レコード会社の方針に従ってしまうなんて!と非難するのは酷というものだ。
ファッションだって、確かに20歳前後の女の子というものは、もっとも変化が激しいお年頃。
好きな人ができて女らしくなったり、ドレスや化粧品に心をときめかすのも
(なんといっても今の彼女はそれら一流品に触れる機会に恵まれているのだ)当然のことかもしれない。
しかしそれでも、彼女を支えてきたはずの熱心なファン自身が、納得しきれないのはどうしてだろう?

やんちゃで落ち着きのないアヴリル・ラヴィーンは、常に同世代のアイドル達をバッシングしてきた。
”ブリトニーなんてブラだけで歩き回ってるようなもんじゃない”
”ヒラリーみたいなお子様はママの言うことを聞いてればいいわ”
彼女のあけすけな発言に、ファンの女の子たちは熱狂してきたが
それは対象のアイドルが嫌いだからというより(もちろんそれもあるだろうが)、
そういった発言が、同時に自立したかっこいい女の子の象徴であったからだ。
男の子に左右されない、他人がどう言おうと自分は自分でいい、
身の回りのことは自分でする、己の自由のために立ち上がって闘う・・・
勇敢なアヴリルに、だからこそ女の子達は熱狂した。ところが今はどうだ?
ここで最初の文章に戻る。
セクシーなドレスを着ることも、パーティに行くことも、それほど悪くないだろう。
しかしそれについて、アヴリル本人が「女らしくなるのは当然のこと」などと
さも過去の発言を忘れたかのように振舞うことが問題なのだ。
若気の至り。そう片付けるのは簡単かもしれない。
だけど、あの剥き出しの反抗心は、女の子でもできる、という信念は、
男なんてクソ喰らえ、と蹴飛ばしたガール・パワーは、
その精神すら”幼かっただけ”と撤収してしまうのか。
違う。彼女達が支持したのは、単なる若さゆえの浅はかさではない。
強くてタフでクールで自立した、そんな女の子の存在価値だったはずだ。
その美しいガラス玉を、アヴリルは高価な宝石と引き替えにしてしまった。
ファンはきっと、そういう風に感じているに違いない。

彼女の音楽的才能には、まだまだ期待できる部分は多いが
それも全て、魅力的なソウルあってのもの。
先を急ぐあまり、彼女が完全にそれを見失ってしまうことのないように
見守るファンの目は厳しいが、それも女同士だからこそ、だ。


2.Togather
好きなタイプの曲ではないが、意外性のあるメロディは成長を感じさせる。
海外では特に人気が高いみたい。
緊迫感のある雰囲気が良い。

3.Don't Tell Me
思ったほど売れなかったファースト・シングルですが、個人的には気に入ってます。
アダルト・オルタナティヴを意識したサウンドも、声質に合っているし。
ただしまあ、先行カットにふさわしいかと言われたらちょっとインパクトが弱いのは確か。
あとMVが全然良くなかった。今回のアルバムはMVに手抜きが多いのが難。
アヴリルらしく韻を踏んだ歌詞は今回も冴えています。
”So get out of my head,get off my bed”というフレーズが好き。
関係を先走ってしまうボーイフレンドに厳しく喝を入れる内容。

4.He Wasn't
前アルバム「Sk8er Boi」のポップ・パンク路線を踏襲する一曲。
歌詞・曲ともにあまり好きではありませんが、MVが最高に可愛い!
このアルバムの中ではダントツ。
小悪魔っぽい雰囲気を前面に押し出していて、好感度はともかく可愛い。

6.My Happy Ending
アルバムで一番好きな曲。
私以外でも、この曲は全体的な支持が一番高かった気がします。
サビで爆発する曲構成もアヴリルの魅力を引き出しているし(この人の瞬発力には凄まじいものがあるので)
適度にエッジを効かせつつ、キャッチーな仕上がりなのはお見事。
これはもうひとえにプロデューサーであり共作者であるブッチ・ウォーカーの手腕ですよ。
でも私が最も気に入ってるのはやっぱり歌詞。
”So much for my happy ending”(私のハッピーエンドなんてこんなもん)という
ちょっとひねくれた、素直じゃない感じが逆にせつないし
張り詰めそうに強がった感覚が凄くよく出てる失恋ソング。
これはこれまでのアヴリルの曲含めてもトップランクで好き。

7.Nobody's Home
元エヴァネッセンスのベン・ムーディーがペンを取った曲。
アルバム・ヴァージョンよりも、ボーナストラックのライブ・ヴァージョンの方が
この曲の哀切加減がよく出てて良いと思う。
しかしアヴリルは、エヴァネッセンスのエイミー・リーみたいになりたいのかね。音楽も服も。

9.Who Knows
この曲も凄く好き。
人生を精一杯生きようという趣旨のもので、折角こういう歌詞が書けるんだから
これ一曲以外にも収録すれば良かったのに、というのが正直な感想。
ファンの反応とかを見てて驚くのは、若い子は特に、
”恋愛の歌詞ばっかりは嫌だ!”って思ってるらしいことね。
そういう面からも、アヴリルが彼女らのライフスタイル・リーダーなんだなあと実感させられる。
”誰が知ってるっていうの 次に何が起こるかなんて あなたが何をすべきかなんて
 笑顔を絶やさないでいて
 たったひとつ真実なのは、毎日が新しい日だってこと
 私は今日を、人生最後の日みたいに生きるつもり”
というエネルギッシュかつ純粋なサビには心から鼓舞されるし
2番と3番の間奏部分
”自分自身をみつけて だって私にはわからないから
 自分らしくいて あなたは誰?
 自分自身をみつけて だって他人にはできないから
 自分らしくいて ねえ あなたは誰?”
というメッセージも、彼女本来の自立心を表現していて、非常に好ましい。

10.Fall To Pieces
これも爽やかな雰囲気の良ポップス。
ソングライティングはアヴリル本人とレイン・メルダ。彼はプロデュースも手掛けています。
カナダのバンドOur Lady Peaceのフロントマン。
恋する気持ちが高揚する、ファースト・アルバム路線の一曲。

11.Freak Out
ノリがよくて元気ハツラツ!なパンキッシュなナンバー。
こちらもプロデュースはブッチ・ウォーカー。いい仕事してますよほんと。
ライヴで盛り上がりそうな曲。




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