人生の1曲.

ここでは、私の中で忘れることの出来ないかけがえのない名曲を紹介していきます。




カルミナ・ブラーナ/オルフ(ズービン・メータ指揮 ロンドン・フィルハーモニー演奏)
アルバム「カルミナ・ブラーナ」(収録:92年)


今回取り上げるのはクラシック曲。
私はクラシックは不勉強で、あまり詳しいことや指揮者うんぬんを語れなくてお恥ずかしいのですが
この曲を最初に聴いた時はとても衝撃的で、以来たびたび聴きたくなります。
この「カルミナ・ブラーナ」は20世紀の作曲家カール・オルフによる、25の曲からなる作品で
合計すると1時間強の大作です。
インストゥルメンタルもありますが殆どの曲に歌がついており、合唱やソロなど様々です。
中でも私が、というか多くの人がそうだと思いますが、一番心惹かれるのは最初と最後を飾る
「おお、運命よ」という曲。
有名な曲なので耳にしたことがある人も多いと思います。
シンバルの音を皮切りに、荘厳な雰囲気で男女混声の大合唱が始まる。
まるで地獄から死者が蘇ったように、重々しく恐ろしく、それでいて神聖です。
聴く者の不安を否がおう無しに掻き立てる。
歌詞の内容は、運命の絶対性を歌っています。
「カルミナ・ブラーナ」は南ドイツの修道院で発見された中世の詩歌集をもとにつくられたということで、
まさにそんな感じ、バロック式教会の荘厳な雰囲気そのまま。
因みに高校生の時学園祭で上演した劇「半神」で、クライマックスの手術シーンは
真っ赤なライトに照らされた何もない舞台に、この曲が大音量で流れるという演出にしたくらい
(あれ、記憶がこんがらがってきた モーツァルトのレクイエム「怒りの日」と迷って結局どっちにしたんだか)
とにかくなんとも恐ろしくて畏れ多くて切羽詰った感じの曲です。



正しい街/椎名林檎
アルバム「無罪モラトリアム」(99)収録


個人的には椎名林檎の最高傑作だと認知しているアルバム「無罪モラトリアム」の冒頭を飾るのがこれ。
基本的に、椎名林檎の個性の強さには小気味良いものさえ感じるのだけど
この曲に限っては逆で、普遍的なせつなさ、それも
青春時代、故郷、幼さ、後悔、憧れ、そういったテーマがたまらなく胸に沁みる。
当時は林檎自ら自分のことを「新宿系」と名乗っていたし、
自由奔放な恋愛体質っぽい(イメージのある)彼女の、意外なほど純粋な部分、
そして人間性、音楽性の初歩的な部分がストレートに伝わってくるから。
というか、地方出身者としてはこの歌詞に何か感じ得ない訳にはいかないんじゃないかな。

ドラムのイントロからすぐ、林檎のハミング(て言えばいいのかしらん?)が響き
”あの日飛び出した この街と 君が正しかったのにね・・・”というフレーズ。
物凄い求心力である。
歌詞の内容は、高校時代(?)の彼氏を置いて、故郷から都会へ飛び立った女の子の話。
1年後、里帰りをして再会した彼氏と街 
変わらないやさしさに心動かされながらも素直になれず、悪態をついてばかり。
本当はもう、都会での限界に気付き傷付いているのに。
だけど後戻りはできない。そしてまた、彼女はひとり故郷を後にするのである。
同じような経験をしている訳じゃないけど、なんか凄いよくわかる。
地元のやさしさは怖い。
自分のことを知り尽くしていて、それでいて赦してくれる。
自分の独立心を根本的に揺るがしてしまうあの包容力は魔物だと思う。
だけど1度振り切ったものをまた受け入れることは本当に難しい。
それはその間の自分の努力や歴史や、存在意義全てを否定してしまう気がするし
何よりも、自分が裏切り者だとわかっているからこそ、厚顔無恥にやすやすと戻っていくことなどできない。
それが彼女に残された唯一のプライドなのだから。

一番好きなのは3番のサビ。

もう我儘など言えないことはわかっているから
明日の空港に最後でも来てなんてとても言えない
忠告は全て今 罰として現実になった
あの日飛び出したこの街と君が正しかったのにね

他には、”なんて傲慢な類の愛を押し付けたんだろう”というフレーズにもぐっとくるし
あと、この曲のヴァース部分の歌詞の配合(?)はちょっと凄いと思う。
途切れ目なく歌詞が繋がっていて、こりゃもう口からそのままずるずると出てきたんだなと呆気にとられる。
彼女曰く、この時期の曲は、まず曲ありきで歌詞はメロディに合わせて適当に(この言葉は適切でないが)
書いていたらしいのだけど、むしろ彼女の天性の才を感じさせるエピソードだと思う。

故郷には帰らない人へ。
故郷には帰れない人へ。



Here With Me/Jennifer Paige
アルバム「Positively Somewhere」(01)収録


シングルカットすらされてない、歴史的には全く重要でない曲ですが、
なんとなしに試聴してみた時の、あの衝撃は忘れられない。
もう奇跡のように全てがしっくり、ぴったりとはまった。これを待っていたんだと。

何が良いのかと言われても少し困る。とにかく全方位ジャスト私の好みを満たした曲、
それがJennifer Paigeの「Here With Me」。
あなたの好きな曲はなんですか?と訊かれたら、他の有名な曲を答えるかもしれないけど
どういう感じの曲が好きなんですか?と訊かれたらこれを挙げます。
自分にとってそういう雛形的存在というか。自分の好みの指標となる曲。

軽すぎず重たすぎない、凛としたバンド・サウンド。
でしゃばらない程度に絡む電子音。
大人しめなヴァースから一気に疾走するコーラス、という曲構成。(この手の構成が好きなことは下でも触れた)
特にコーラスの、耳に残るメロディ。
そして、Jenniferの爽やかでしなやかでせつない美声!
歌詞も素晴らしい。ラヴ・ソングではあるけれども、甘すぎない大人の歌。
単に私のそばにいて離れないで!って内容ではなくて、
”頑張ったところで何にでもなれる訳じゃない
 あなたは救ってくれたの 何にもなれなかった私を”
ってフレーズが物凄い好きだ。
盲目的に努力や夢を連呼するリリック(特にJ-Popに多いと思う)に嫌気が差していたので、
非常に納得させられた。そうか、そうだよねって。

まさに、自分の理想を具現化したらこういう曲ができました、って感じです。
というか、これを聴いた時点ではまだ洋楽にはまって日が浅かったため
変な話「ああ、私はこういう音楽が好きなんだな」と自覚させられることになった。

作曲、プロデュースを手掛けているのはMatt Bronleeweという若手プロデューサーで
もともとPlumbというバンドに提供したこの「Here With Me」(と「Stranded」)を
Jenniferと再レコーディング、アルバム収録の運びとなった模様。
Natalie ImbrugliaとPhil Thornallyの「Torn」にまつわるエピソードと似てますね。
と思ったら、Matt BronleeweはNatalie Imbrugliaのアルバム「Left Of The Middle」収録の
「Smoke」という、これまた私の大大大好きな曲も手掛けているのでした。
だから、Jenniferが好きというよりはMatt Bronleeweのセンスが好きなのかもしれないけど、
いや、やはり彼女の美しい歌声なくしてこの曲は成り立たない。
風のように駆け抜けた後、ほんのり甘酸っぱさが残る、女性ポップロックのお手本的作品!



バラ色の人生/及川光博
アルバム「欲望図鑑」(99) 収録


”犬に肉をやるとき毎回ベルを鳴らしたら、べルを鳴らしただけで犬は涎をたらすようになる”
という、慣性の研究でノーベル賞まで得たパブロフ博士に、
むしろそのバカ犬に、ここでは敬意を表したいね。
及川光博の「バラ色の人生」、そのイントロが流れ始めたその瞬間、
私の体は踊ります。振り付けを一寸も間違えることなく、
曲が終わるまで勝手に踊り狂います。無意識で。

違うんです。たったさっきまで違う曲を紹介しようと思ってたのに、
BGMでミッチーのアルバムを流してたら、この曲になって
気付いたら上記の行動をしてました。笑えるくらい馬鹿だ。それでいい。
私はこの曲が本当に本当に好きです。もう好きでしょうがない。

名曲と呼ばれてイメージしやすいのは、心を掻き乱すようなラブソングだったり(既出のU2なんかそうね)
映画のシーンが似合うような、壮大なバラードだったりする訳だけど。
「バラ色の人生」。このタイトルからして素晴らしく華やかな、
キラキラしてロマンティックで思い切りポジティヴなアップ・チューンは。最高です。
だってサビのはじまりが「超ロマンティック!!」だよ(笑)
この文章を読んで「馬鹿だな〜こいつ」と思われる方が多くいらっしゃるだろうことは
重々承知している。いやしかし、聴いててこんなに楽しく明るい気持ちになれる曲は、
それもサウンドだけじゃなくて歌詞も含めて。なかなかありません。
単に騒ごう!踊ろう!みたいな歌詞では決してないし。
人生に対してポジティヴであるということの大切さ。
確かに大仰に表現はされているけど、伝わってくるのはネガを乗り越えた上での強さ。
特に好きなフレーズは
”めくるめく閃光のスコール
 バラ色のくちづけで 世界を変えてしまおう”かな。
あと”僕の全てを注ぎ込んで オリオンの3つ星を君に捧げよう”ってのも本当に素敵。
こういうベタなロマンティックさは、特に女の子には絶対に必要なものだと思うの。
人生ときめいてなんぼだもん。
まるで極上のシャンパンのように、艶やかで昂揚して、自然に踊りだしてしまうような、
誰もがプリンセスになれちゃう希有で貴重なポップス。



With Or Without You/U2
アルバム「Joshua Tree」(87) 収録


多分いちばん崇拝している歌だと思う。

好きな曲はたくさんあるし、それこそ数えたらキリがないけど
私はこの曲に、一種の畏怖さえ抱いているのだ。
一生忘れることがないだろうことは断言できる。

きっかけはDarrenHayesのインタビューから。
いちばん好きな曲は?という問いに、
「世界でこれまで書かれた中で最も優れた曲」としてこれを挙げていた。
そこまで言うなら聴かなければならない、と。

ただし何故か、借りてみた当初はそこまででもなくて、
確かにそれなりに素晴らしい曲だなあ、くらい。
MDに録音したものの、すっかり忘れてしまっていた。
ところがしばらくして、またふと聴き始め
この曲のあまりの求心力に突如として気がついた。以来、神聖なる存在。

「With Or Without You」は、究極の愛の歌であり
そして究極の哀の歌だ。
どれだけ愛しても埋められない距離、
それはすなわち、消えることのない互いのエゴイズムのことである。
”君がいてもいなくても生きていけない”
このフレーズに全てが集約されている。
君なしでは生きられない、というのは古くからの常套句だが
君がいても生きられない、などとこの歌は叫んでいる。
なんと勝手な言い分だろう。
だけどそれが、紛れもない人間の本質なのだ。
愛し愛されて、傷つけ合い、
打ちのめされてもまだ待っている。
愛せば愛するほど相手の、何より自分の醜さに直面するのに、
それでも求めてしまう。
むしろそれは、己の罪を赦してもらいたいからなのかもしれない。
赦し合って、またえぐり合って、絶望の果てに抱き締め合う。
終わりのない繰り返し。

音楽的なことにも触れておこう。
私は率直に、この曲の構成が大好きだ。完全にツボである。
静かなAメロBメロから、サビで一気に開ける感覚。
同時に曲全体も、エンディングに向けて徐々に徐々に盛り上がっていく。
そしてボノの、リアルすぎる歌唱。
まるで全人類の魂を背中に負ったような悲壮な歌声は
聴く者の心を捉えて離さない。
どうしようもない陳腐な言い方をすれば、
まさに彼は世界の中心で愛を、愛そのものを叫んでいる。

勿論、君がいてもいなくても生きてはいけるのだ。
そんなことは誰しもわかっている。
それでも私はこの歌を聴く。ずっと聴き続ける。





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