私設図書館 作品別レビュウ


きらきらひかる/江國香織<恋愛>

最初に読んだ江國作品。
今ではもうとんと江國香織を読まなくなってしまったけど(最近の雰囲気は好まない)
はじめてこの作品を読了した時は、「こんな面白い作家がいるんだ!」と思ったものでした。
当時私はまだ小学生だったので、正直ゲイのどうのこうのは理解してなかったと思いますが
物語の持つみずみずしさ、そしてせつなさは確かに感じ取れたと記憶している。
具体的なストーリーは、もうあまり憶えていないのだけど
とにかく一気に読みすすめて(何の気なしに図書館で手にとってみたら、
面白くて止まらなくなって、ロビーのベンチでずっと読んでいたことをありありと思い出せる)
やさしいラストにとても満足したのでした。
というか、このレビュー書いてて、最近の江國作品がなんで受け付けないのか、わかった。
ごくシンプルで、きらりと、訴えかけてくる彼女の文章が好きだったのだな。
今を悪いとは言わないけれども(ちゃんと読んでないし)
時期というものはあるのだな、と思う。
どちらにしろ、この作品は思い出に残る一冊であることに変わりない。


竹下派 死闘の70日間/田崎史郎<ノンフィクション>

これは私の進路を決めたぐらい大好きな本。
好きと言うには語弊があるか?
内容は、長らく自民党の最大派閥として勢力を誇っていた竹下派(経世会)が
いかに分裂し、崩壊し、対決していったかを追った政治ノンフィクション。
大体1990年代くらいの話になるので、近くて遠い世代というか
当時の人がまだ生きて活躍している分なかなか語られにくい部分を
この本はあくまで客観的に、静かに、そして熱く語っていて
それはもう、「三国志」か何かを読んでいるかのように興奮したものです。
打ち震えながらこの本を読んで、理解したのは
私はこういう権力闘争の物語に、それもリアルな世界での権力闘争に
この上なく惹かれてしまうのだということ。
政治に興味があるのは事実ですが、政策や行政云々以前に
政治家同士の関係・動向といったことに異常に興奮してしまうのですね。
というか、人間の生き様みたいなのが好きなんだわ。
触発されたという意味でも、この本は本当に大きい存在。
今でも時々読み返しています。
因みに大学の受験面接で、これについて熱く語りました。
どう考えてもそんな女子高生は気持ち悪いだろうよ。
受かったからいいけど。


幼年期の終わり/アーサー・C・クラーク<SF>

小学4年生くらいの時、何故かSFに目覚め、有名なものを色々読んだりしたのですが
(「夏への扉」とかレイ・ブラッドベリとかフィリップ・K・ディックとか)
その当時の頭では、まだSFを理解するに至らず、なんとなくで終わってしまっていました。
しかし、高校生になって読んだこの「幼年期の終わり」
これはもうほんとにめちゃくちゃ面白くて、目が覚めるような思いをしたものです。
舞台は近未来の地球。
”オーヴァーロード”と呼ばれる異星人の手によって、平和に支配されている。
そしてある時を境に、子供たちが急激な進化を遂げ始める。
これは何を意味するか?そして地球の未来はどうなるのか?
読み終わったとき、もうあまりの結末に鳥肌が立って口がきけなくなりました。
ハッピーエンドとも、バッドエンドとも違う。
言ってみるなら・・・せつなさ?
凄まじいまでのせつなさ、目を閉じて気が遠くなるような感覚、
そしてアーサー・C・クラークの果てしない才能に
魂を抜かれたように呆然としながら、そして同時に名作に出会えた喜びを隠せませんでした。
”人類はもう孤独ではない”(=人類以外の生物がこの宇宙に存在していたことを意味する)
という言葉にも、なにか静かな衝撃を感じるなあ。
オーヴァーロードの正体(人類より高等な異星人であることにはかわりない)と
それにまつわる既視感の説明も、ただただ凄いなあと思ったし。
これに限らず、私はSFを読むととてもせつない気分になるのだけど、
きっとそれは、人知では説明できないものが存在する、ということへの恐怖、
もしかして自分たちはとても無力で孤独なのではないか、という想いを呼び起こすから、
なんだと思いますが、「幼年期の終わり」はまさにそういうことだった。
でもほんと、せつなくなるといっても、妙な清々しさすらもあって
とにかく大傑作。やばいです。鳥肌。


6月19日の花嫁/乃南アサ<ミステリー>

新潮文庫が夏になるとはる一大キャンペーン「新潮文庫の100冊」で
この本が長らく取り上げられていたので(今は違うかな?)
ずっと、タイトルと概要だけは知っていたのです。
読みたいなあとも。
でも何故かずるずると、手をつけないままになっていて、
先頃勢いで買ってみました。
そしたらめっちゃ面白くて、はやく読まなかったことを後悔!
私の大好きなタイプの本でしたわ。
物語は、6月12日、主人公池野千尋が乗った車が、雨夜に事故にあうところから始まります。
次に彼女が目覚めると、見知らぬ部屋、見知らぬ男、
そして見知らぬ自分・・・
そう、彼女は自分の名前すら思い出せない記憶喪失に陥っていたのです。
唯一はっきりとしているのは”1週間後に結婚する”ということだけ。
彼女を拾った男・前田の好意で、彼の家で過ごしながら記憶を取り戻そうとするが
ぶちあたる事実は、予想外のものばかり。
彼女は一体何者なのか?
6月19日に幸せな結婚を果たすことができるのか?
物語を更に複雑にするのは、前田の存在。
千尋の前では何も知らないふりをしていますが、苦悩する彼の心理も描写されます。
主人公が一筋縄の記憶喪失(?)ではなくて、色々と絡みまくってるのがミソ。
ミステリーであり、自分探しの旅であり、ロマンスであり、アクション。
最後の逃亡シーンなんて、映画を見ているようなドキドキ感。
最初は弱弱しく、絶望的になるばかりだった千尋が
だんだんと賢く、理性的に、そして強くなっていくのが爽快でもあります。
そしてラブ要素ーーーー!
文庫版336ページの会話部分とか、思わず「キャー!」と叫んでしまいましたよ。
おかげで結婚したい症候群です。
ニヤっとさせる終わり方もいい。
千尋の最後の言葉に、胸のすくような快感!


シンデレラの鉄ゲタ/和泉かねよし<漫画>

かねよしという名前ですが、女性の漫画家さん。
今は別コミの看板作家として活躍していますが、この作品は比較的初期のもの。
短編集で、3つ収録されているんですが、とにかく表題作「シンデレラの鉄ゲタ」が抜群!
展開自体はベタなんですが、強いメッセージ性とキャラの魅力が素晴らしい。
18年間デブスとして生きてきた主人公十和子が、有名企業の御曹司・秋津の乗った車に轢かれてしまい
顔の手術(整形)を経てスーパー美人に生まれ変わる。
そしてひょんなことから、秋津が手掛けるプロジェクトのモデルオーディションに挑戦することに・・・
という感じのお話です。
主人公2人のキャラがとても立っていて、話に説得力がある。
美人になってもなかなか踏み出せない十和子と、イケメンで俺様キャラなのに、どこか淋しそうな秋津。
特に秋津はかなりカッコイイ!決め台詞がどれも効いてて、女子なら好きにならずにはおれん。
物語は、十和子自身の成長と、ふたりの恋愛を絡めて進んでいきますが
ドラマティックなクライマックスの後、さわやかーに終わるのがまた良し!
また、和泉氏は印象的なシーンを描くのがとても上手い人なのですが、
特に十和子がオーディションで、審査員から「整形のくせに」と批判された時
力強く言い返すシーン、最高でした。この作品のテーマは全てあそこに集約されてます。
外見に自信のない全ての女子に(というか女の子は誰だってそうだと思うけど)に勇気を与える名シーン。




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