私設図書館 作家別ピックアップ


萩尾望都

影響を受けた漫画家のひとり。
中学生で「半神」に出会って衝撃を受けました。
母も妹も好きなので、割と手に入りやすかったし。
ただし「残酷な神が支配する」は未読です。友達が読んでたんだけど、
彼女曰く「あまりに辛すぎる」のでちょっと手を出せなくて・・・
まあ、この作品もやっと完結したので、そういう意味では読みやすくなったかなと思いますが。
人間の、特に傷付きやすい未完成の少年少女の、繊細な心理を描かせたら右に出る者はいません。
また、単純なハッピーエンド作品は殆どなく、いつも読み手に深い余韻を与える作家。
しかし何より驚きなのは、萩尾望都っていう名前が本名だってことですよ。
うーん、なるべくしてアーティストになった人だ。


「半神」

いちばん好き・・・というか、思い入れがある。
あまりに感銘を受けたので、高2の時自ら脚本書いて学園祭で上演しちまいました。
シャム双生児(身体の一部が繋がったまま生まれた双子)の物語。
姉ユージーはとても頭がよくしっかりしているが、醜い容姿で
対して妹ユージーは知能が遅れており言葉も喋れないが、天使のように愛くるしい。
それもこれも、ユーシーの身体が栄養をつくりだせないために、
ユージーの栄養をどんどんと盗ってしまっているから。
ユージーは賢い分、色んなことがわかってしまう、
自分の醜さや、我が身の不運、そしてただ顔が美しいだけでちやほやされる妹。
そして成長したとき、医師からある宣告をされる。
このままではふたりとも死んでしまう、切り離す手術が成功すれば、ユージーだけでも生き延びられる、と。

結局手術は成功し、妹は死に、姉は生きる。
だんだんと容姿も美しくなり、自由に走り回れ、ボーイフレンドもできるまでに。
ユージーに恥じるところは何もない。
だけど静かな夜に、ひっそりと鏡の中に佇む自分を見たとき、彼女はわからなくなるのだ。
鏡に映る可愛らしい女の子は誰?
これはまさに妹ではないか?
かつての自分はどこへ行った?
死ぬ直前の痩せ細った妹の姿は、あれは自分自身の姿ではなかったのか?
そしてあの時死んだのは、一体誰だったのか・・・。
「こんな夜は涙がとまらない」というモノローグで物語は終わる。

これなんとたった16ページのお話なんです。有り得ません。
こんな作品が世にあったのかー!!と感動しました。
はっきりとした答えは明示されませんが、ユージーのモノローグ
”愛よりももっと深く愛していたよ おまえを
憎しみもかなわぬほどに憎んでいたよ おまえを”
が実に印象的です。
まさにそういうことなんでしょうけど。
ただひたすら考えさせられる作品。文句なしの名作です。


「トーマの心臓」

とても有名な作品です。丁度文庫1冊分。
まずタイトルがいいですよね。とても目を惹くタイトルだと思います。
舞台はイギリスのギムナジウム(寄宿学校)。男子校です。
エーリクという可愛らしい男の子が転校してきたことから話は始まる。
学校は騒ぎに。何故ならエーリクは、先日自殺したトーマと顔立ちがそっくりだったから・・・
子供っぽいけど芯の強いエーリク、厳格な優等生ユーリ、ユーリのよき理解者で不良のオスカー、
そして死んだトーマを中心に物語は回転してゆく。
みんな美少年です(笑)
トーマの自殺の原因とは?ユーリが頑なに心を閉ざす理由とは?
主なテーマはこのふたつですが、少年たちのキラキラした青春そのものが主役。
正直、最初に読んだ時は理解しきれない部分もあったのだけど(私が既に汚れたということか?)
彼らの不器用だけど一生懸命な生き方にはじーんときます。
私の一番好きなキャラはもちろんオスカー!大好きだー!!
オスカーは基本的に脇役ですが、父親に対する内なる葛藤はせつなすぎます。
因みにこの作品を溺愛する妹(枕元において毎日のように読んでいた・・・)は
ユーリとサイフリートの邪悪な関係が大好きらしいです(笑)
私に向かってしょっちゅう「神?神が何をした」と言ってきます。病的な姉妹です。
萩尾作品にしては珍しく?すっきりとした、雨上がりのように爽やかなラストもいいです。


「11人いる!」

実はアニメ版を先に見てます。それこそ萩尾漫画に出会う前です。
BSの夏休み特別アニメでしたが、非常に面白かった。
後に母が(元々好きだったらしい)原作を買ってきて。
基本的にアニメと同じでしたが、忘れてるところも多々あったのでまた楽しめましたー。
SFモノです。
宇宙大学に合格するべく、難関の試験を乗り越えてきた若者たち(そうじゃないのも混じってますが)
最終テストは”宇宙船に10人1組で乗り込み、53日間サバイバルをすること”
しかしなんと、動き出した宇宙船には11人いた!
誰が偽者なのか?一体どうやってもぐりこんだのか?
様々な想いが錯綜する中、宇宙船は次々にトラブルに巻き込まれてゆく・・・!
ドキドキハラハラのSFアクション。
普通に面白いです。ちょっと少年漫画っぽいタッチかも。
因みに文庫版には続編も収録されていますが、ちょっと人物設定とか変わってて適当な感じです(笑)
あとがきがわりのミニマンガも面白い。


「ポーの一族」

萩尾望都の出世作。
永遠に生き続けるバンパネラ(吸血鬼)、エドガーとアラン、
そして彼らが行く先で出会う様々な人々の物語。
全体的に哀しい雰囲気漂う作品です。バンパネラの重たい運命がそうさせているのでしょうが。
オムニバス形式で過去、現在と、縦横に無尽しており
読み進めていくと時々、白昼夢を見ているようなせつない感覚に襲われます。
萩尾作品の中では、そう好きな方でもないのですが、妙に心に残る漫画です。
ラストは・・・不思議な感じで終わりましたね。結局どうなったんでしょう?
萩尾ファンはこの作品が一番!という人も多いみたいですね。
どうでもいいですが「メリーベルーー!!」と無意味に叫びたくなります(?)



佐藤賢一

今や文壇では、中世ヨーロッパの歴史物語の第一人者的存在になりました。
「王妃の離婚」で直木賞も受賞。
歴史ものと言ってもそう堅苦しく考える必要はなく、
結構恋愛要素やらミステリー要素やらが強いので誰でも楽しめると思います。
まだ2作しか読んでないですが、凄く好きな作家さん。
ただし文章の書き方にちょっとクセがあって、言い回しが多少くどい感じ?なので
そこが駄目な人は駄目かも。でも話自体はほんと面白いです。
あと性描写が瑞々しい(大事!)のもこの作者の特徴かな。


「王妃の離婚」

最初に読んだ作品で、一気にファンになりました!
第121回直木賞も受賞した人気作品。
主人公は、かつてパリ大学一の英才と言われたものの、今は落ちぶれて片田舎で弁護士業を営む中年フランソワ。
時の国王、ルイ12世がジャンヌ王妃に対して起こした離婚訴訟を見に行ったのがきっかけで
なんとフランソワがジャンヌ王妃側の弁護人として働くことに!
最初から負け戦とわかっているこの裁判、しかし「ブスだから」という理由で離婚を突きつけられた王妃の正義の為に、
そして自らの青春を取り戻す為に、フランソワは敢然と立ち向かっていく・・・
というストーリーです。
情勢がどんどんひっくり返って全然飽きません。
フランソワの秘密も徐々に明らかになっていくし、登場人物もみんな魅力的。
特に自分が女なのでジャンヌ王妃には肩入れしてしまうね。
フランソワが次々と秘策を放つ展開にも、いち法廷サスペンスとして大興奮!
ただしこのお話の一番素晴らしいのは、全てが解決した後で、それでも完全には報われないフランソワを
ある事実が救ってくれる・・・ってとこですね。
最後の最後に素晴らしいオチ。読後の爽快感が素晴らしいです。


「カルチェ・ラタン」

どうしても佐藤作品が読みたくなって本屋をうろついてたら、丁度文庫の新刊で出てたので即買い。
思えば受験生だったのによく読んだな。
結構長めです。とはいっても佐藤作品の中では短い方かな?
舞台はこちらもフランス、ソルボンヌ大学が主な舞台です。
「マギステルーー!!(ひえー!)」という叫び声が今日も夜のパリにこだまする。
声の主はドニ・クルパン。水運商のボンボンで、新卒なのにパリ夜警長に就任した青二才。
彼が慕う相手こそ、学生時代の家庭教師であるマギステル(敬称)・ミシェル。
美貌で博学多識の修道僧でありながら、数々の美女と浮名を流す破戒僧なのだ。
このでこぼこコンビが、パリを脅かす事件を解決していく・・・というのは当然の流れとして
最後には、一連の事件を陰で操る黒幕との対決が控えています!
ミステリーでありつつアクションであり、恋愛ものであり、ヒューマンドラマであり、っていうのは
佐藤作品の定石ですがこの作品でもそれが顕著。
テンポ良くぐいぐいと読めます。
後半、神学論争なんかが絡んできて、ちょっと難しく思ってしまうかもしれませんが
ストーリー自体がよくできているので気にせず読むことをおすすめします。
最後の爽やかなオチがまたいいね!
ドニ可愛い。ミシェル格好いい。
この本は副題「ドニ・クルパン回想記」となっていて、当時発行されたものを、
現代の佐藤賢一が訳した・・・という面白いつくりになってます。




東野圭吾

かなり読んでます。
安定して面白いものを書ける作家さんで、どの本もハズレがありません。
ミステリーのイメージが強いですが、SFものや恋愛要素のつよいものなど、
色々書いていてバラエティ豊か。
今最も勢いのある作家さんのひとりでしょう。
ランキングをつけるとすると

1.白夜行
2.回廊亭殺人事件
3.私が彼を殺した
4.秘密
5.眠りの森

かなー。他にもいいのはいっぱいありますけど。
東野圭吾の特徴は、いかにも理系であることが挙げられます。
作家というと文系を想像しがちですが、彼は工学部卒元エンジニアの超理系で、
その為理系のトリックや設定もしょっちゅう出てきます。
「探偵ガリレオ」なんて物理学者が主人公だし。
その為か、文章も非常にサバサバしてるというか、
小難しくなくぐいぐいと読めます。
また、作家にはキャラクターを大事にする人とプロットを大事にする人がいて、
宮部みゆきや有栖川有栖なんかは前者ですが、東野圭吾はもろ後者。
なんつうか、どれだけ良いキャラが登場しても、
より良いストーリーの為にばっさばっさと斬っていくの。見事なほど。
「えーここで殺しちゃうのかよ可哀想すぎ!!」みたいなことがしょっちゅうあります。
基本的に、最後にあっと言わせられる作品が多いので、
読んでて気持ちいいよ。損はしません。


「眠りの森」

一番最初に読んだ東野作品。
この作家の作品は結構重たいものも多いのですが、
これはミステリーながらも恋愛度数が高めで、読みやすくていいよ。
初心者向けには最適かと。
あるバレエ団で起こった殺人事件。
一見正当防衛かに見えたその事件の裏に隠された思惑とからくりを巡って
若き敏腕刑事、加賀恭一郎が活躍します。
人気の加賀シリーズ、これが第1作目ですね。
加賀恭一郎というキャラクターは、元々初期の作品「卒業」に大学生探偵として登場するのですが
東野氏の思いつきでこの作品に再び刑事として登場させてみたそう。
以来人気を博しレギュラーとなりましたが、この時点では深く考えてなかったとか。
精悍で心優しい加賀刑事、格好良いよ。
彼と、バレリーナ、未緒のロマンスの行方もみどころ。
ちょっとせつないミステリーで女心にぐっとくる。


「悪意」

これも加賀刑事もの。
3部構成になってて、凄く凝ったストーリーです。
テーマは「何故人は人を殺すのか」
といっても観念?的なものではなく、その理由だけに迫った、興味深い作品。
有名な作家が殺され、犯人もすぐに捕まるが、
その犯人はどうしても動機を告白しない。
しかし警察の調べにより、意外な事実が明るみにではじめる・・・
といった流れですが、もうどんでん返しに次ぐどんでん返し!わーお!
悪意というタイトルがキーワードです。
あまりいい後味ではないですが、とにかく感心させられました。
こういう視点があったのかってびっくりするよ。実に興味深い。


「回廊亭殺人事件」

2番目に読んだ東野作品ですが、これで完全にはまった。
とにかく練りに練られたプロットがすごーいの!
旅館回廊亭で、何者かに火を放たれて恋人を殺され、自らも瀕死の火傷をおった主人公が、
その犯人を探し出すべく老婆に化けて調査に乗り出す。
彼女が秘書をしていた会社社長が亡くなり、その遺言の公開が回廊亭で行われるのだ。
敵は集まった親族一同の中にいる・・・
この設定だけでも凄いですが、回廊亭でまた殺人が。犯人は誰よー!?
主人公の変装もばれそうになるし、もうドキドキさせられっぱなし。
そして最後の最後で恐ろしい秘密が明らかになります。
最初読んだ時思わず声あげました。有り得んって叫んだ。
そして怒涛のラスト。まさかここまでやるとは・・・と、呆気にとられ、
次の瞬間最初から読み返してしまう。凄い作品。
この書き方には賛否両論もあるようですが、個人的には大好き。
こういうどんでん返しの美しさこそ、東野圭吾の真骨頂だと思います。あまりに鮮やかだ。


「パラレルワールド・ラブストーリー」

パラレルワールドとは擬似世界の意味。
不思議な感覚のミステリーであり、恋愛物語です。
主人公は、ある日目覚めるとふとした違和感をおぼえる。
美しく聡明な恋人と同居し、仕事も順調で、全ては上手くいってる筈なのに
言いようのない違和感と不安。
そしてその違和感は夢として具体化する。
恋人と自分の親友が付き合っていて、自分が横恋慕するという夢で。
そして現実世界での親友の不在にも気付く。
同じ職場で研究者として働いていた親友が、いつの間にか渡米していたらしい。
何から何まで辻褄があっていて、それでいて奇妙な日常生活。
彼はこの違和感を解明すべく調査に乗り出すが、
それを阻止するかのように謎の圧力がかかる・・・
ある種SFチックな趣もあります。
全て解き明かされたあとの真実がせつない。また、主人公の心情もリアル。


「どちらかが彼女を殺した」

非常に実験的な作品です。
何故なら、最後まで読んでも犯人は明示されない!
読者がヒントを頼りに犯人を解き明かさなくてはいけません。
探偵役は加賀刑事と、被害者の兄。
ふたりが協力しつつ別行動しつつ真実に近づきます。
容疑者は被害者の親友と、元恋人。
しかもふたりは現在付き合っている・・・
復讐に燃える兄と、それを止めようとする加賀のやりとりもいい。
結局私は犯人わかってないけど(笑)
女の方だと思うんだけどなー こういう場合殺しちゃうのは女でしょ多分。多分。


「私が彼を殺した」

上の「どちらかが彼女を殺した」に引き続く形で書かれた、犯人自力推理もの。
こちらの方が完成度は高く、また犯人も突き止めやすいです(巻末の解説を参照にしながら)
売れっ子の作家が結婚式当日に毒殺される。
容疑者は新婦の兄、新婦と新郎の担当編集員だった女、そして新郎のマネージャーの男。
3人にはそれぞれ動機があるが、アリバイも存在する。
犯人は一体誰なのか?
そして何より恐ろしいのは、3人が3人とも「自分があいつを殺してやった」とほくそえんでいること!
それは一体どういうことなのか?読めばわかります。
加賀刑事がここでも活躍。


「秘密」

広末涼子主演で映画化されたので、ご存知の方も多いでしょう。
公開当時、観に行った兄があまり褒めてなかったのでどうなのかな?と思ってたのですが
「秘密」というダイレクトかつ甘美なタイトルにもずっと惹かれていて。
いやあ、こりゃ傑作であり問題作でもあるかと。
一応ミステリーですが殺人(事故死はあるが)なんかは起こりません。
バスの転落事故で、主人公の妻と娘が生死の境を彷徨います。
妻は死んでしまうのだけど娘は奇跡的に命をとりとめる。
しかし、妻の葬儀の夜に目覚めた娘の体に宿っていたのは、
死んだはずの妻の精神だった!
それから、夫と、娘の姿をした妻の、奇妙な生活が始まる。
1冊の中で、5年くらい経過します。
最初は小学生だった妻が、中学生になり、高校生になり、
娘として生きていくことに慣れるのと同時に、夫婦としてのつながりも軋んでいく。
凄く難しいテーマですが、コミカルな場面も多くて読みやすい。
夫と父の間で苦悩する主人公と、戸惑いつつも新たな人生を歩もうとする妻、
両方の心情が理解できて、だからこそせつなくて、終わりが来なきゃいいのにと思いながら読んでしまう。
時の流れの中で、バスの運転手の居眠り運転の原因やら、色々な秘密が解き明かされつつ
一番大事なふたりだけの秘密は、隠されたままです。
それでもこの奇妙な共同生活に終わりは訪れる。
それだけでもいい加減泣けますが、本当の秘密は最後の最後に明らかになる。
個人的には、この秘密を知った後、
せつなすぎて泣けなかった。感動したという人もたくさんいますが
私は無理だった。哀し過ぎて。やりきれなくて。
読み終わった後に、ずーんと深い穴が空いた感じで、
しばらくこの夫婦のことを考えられずにはいられなかったの。
読むことをお勧めする。この秘密は埋もれておくにはせつなすぎる。


「名探偵の掟」

東野氏のギャグセンスと皮肉が存分に発揮されたパロディ小説。
推理モノに欠かせない「密室トリック」や「時刻表トリック」などを面白おかしく解いていきます。
面白いのは、一応主役の探偵とその相棒の警察が、小説の外の世界で会話したりすること。
つまり、「またこのトリックか、やれやれ」「作者も大変なんです」等といった話をするんですよ。
馬鹿馬鹿しくて面白かった。
一番最後のオチも皮肉たっぷりで面白い。
長編で疲れたときに軽く読むのがおすすめ。


「白夜行」

ずばり名作です。
800ページ以上の巨編で文庫にして価格はなんと1000円。
しかし内容はそれ以上にずっしりと重たく濃い。
およそ19年間に渡って、ある男と女の人生を追う。
傍目からは決して交わることのないふたりの人生、しかしひっそりと、確実に、
ふたりは協力し共生して生き延びてきた・・・。
発端は大阪での質屋殺し。
犯人がみつからないまま迷宮入りしたこの事件には、ふたりの少年少女が関わっていた。
被害者の息子、桐原亮司と容疑者の娘、唐沢雪穂。
ふたりは成長し、それぞれの道を歩む。
前者はアンダーグラウンドの商売で稼ぎ、まだ先駆的だったパソコンの販売を、
後者は聡明な絶世の美女として何不自由ない生活を。
しかしこのふたりの行くところに、犯人のわからない奇怪な事件は起きる。
そして質屋殺しを追いかけてきた老刑事が遂に、ふたりを結ぶ糸の存在に気付いていく。
これは土日とかの、たっぷり時間をとれる時に読んだ方がいいです。
これだけ分厚いのに、途中でやめたくない。私はバイトがあったので
泣く泣く中断して、それでも2日で読みました。
本当にずっしり重い。なんてったって19年分の、しかも2人分の人生が克明に描いてある。
ミステリーというよりは、ヒューマンドラマといった方が正しいかも。
ただし全く希望はありません。かなしくて、でもどうしようもない人生がそこにあるだけ。
登場人物の多さも凄いです。全員が全員人間的で魅力的。
これ映画にしたら面白いだろうなー 映画じゃ足りないかな。
12回分くらいのドラマには余裕でなるでしょうね。
因みに、私が特に好きだったのは探偵の今枝と篠原一成。
今枝役は椎名桔平がいいなーちょっと短髪な感じで。
アシスタント?の女の子は加藤あいかな。そこらへん。
老刑事はやっぱ山崎努かしら・・・ああたまらん。
でもね、主役2人は全然思いつかないのよ。や、桐原の若い頃は松田龍平プッシュだけど
明確なイメージが難しい。当てはまるキャストがいないというより
この2人は一応主役だけど、彼らの心理が直接描写されることは決してないのね。
常に誰かの目を通して描かれるだけ。
だから最後まで読んでみて、充実感と同時に虚無感も残る、不思議な感じ。
結局彼らのひととなりは闇に覆われたままだから。
それでも、あえて直接描写を避けることで、逆に彼らの台詞ひとつひとつが意味を持って、
謎に満ちて多面的な、それでも時折人間的な一瞬が、非常に印象に残る。
最後は少し呆気ない気もするけど、なんというか、
しばらくぼーっとしてしまう。魂が抜かれる名作ですよ。


「予知夢」

夜中に少女の部屋に侵入した男が、少女の母親に撃たれて捕まった。
一件落着かと思いきや、その男は17年も前から彼女と結ばれることを知っていたと言う。
現に彼の子供時代の文集には、まだ生まれてもいない彼女の名前が書いてある。
これは本当に予知夢なのか?
というストーリーに!まず心惹かれました。
この謎が本当に解決しちゃうの!?と。
警察の草薙俊介が、友人で物理学者の湯川学の協力を得て事件を解決していくシリーズ。
ミステリーの定石、まさに”ホームズ&ワトソン”のタッグを踏襲しており
シリーズとしてどんどん読んでいきたい。
しかも物理学者というだけあって、かなり科学的な解決が、鮮やかになされます。
小難しい解説は正直読んでもよくわからないのだが(笑)
とにかく謎が興味をそそるものばかりで、はやく先が読みたくて仕方ない。
短編集だから読みやすいし。
・・・と思っていたら、2003年から長編がスタートしたそうです!
こちらも非常に楽しみ。
因みに湯川助教授は黒髪さら毛眼鏡に白衣で、
大学時代はバトミントン部のエースということで体力もあり、
更にオフではアルマーニの開襟シャツを着ちゃうような子供嫌いの34歳。
女子の妄想をそそるわ〜
しかし東野氏によるとモデルは佐野史郎なんだとか(笑)




よしながふみ

今一番好きな漫画家さん。
「西洋骨董洋菓子店」がフジテレビ月9で「アンティーク」としてドラマ化され、
知名度と人気が一気にあがることに。
因みに、この作品で第26回講談社漫画賞も受賞しています。
元々が同人誌出身の方なので、性描写など時に過激なこともあるけど、
淡々としていつつ、細部まで緻密に計算された演出力には唸らされます。
最初から既に完璧に完成している物語を描く、独自の世界観を持つ人。
また、よしながさんは映画や料理などにも幅広い興味があるらしく、
随所に登場する知識やセンスも楽しみなところ。


「大奥」連載中

「愛すべき娘たち」の後、メロディに不定期連載されている新作。
タイトル通り、江戸時代将軍家の大奥を舞台にした物語・・・なのですが
これがなんと、現実の世界とはパラレルワールドになっていて、
将軍は女、大奥にいるのは絶世の美男子たち、という面白い設定になっています。
登場人物が入れ替わりつつ、物語は進んでいきますが
1巻は誠実で明朗な貧乏旗本の息子、水野が主人公。
彼が大奥という伏魔殿にあがり、トラブルに巻き込まれたり出世したりしていきます。
時代こそ江戸ですが、そこはやはりよしながさん、
衣装や食事に関する描写が多くて、そっちも充分楽しめます。
そして8代将軍吉宗様(もちろん女)がカッコイイ!
次の巻では、過去の大奥の秘密が紐解かれていく、といった展開になりそうで
はやいとこ2巻が出ることを期待!


「フラワー・オブ・ライフ」連載中

雑誌ウィングスで連載されている学園モノ。
かなりテンションが高くて笑えます!
5月、高校に遅れて入学してきた金髪頭の春太郎、
自己紹介で明るく「白血病で1年遅れて入学しました!」と言い放ってしまう彼と、
”可愛いコデブ”でお人好し&真面目な三国、
三国の幼馴染みで、無愛想で偉そうな上に萌え漫画オタクの真島海。
この3人を中心とした1年D組を舞台にした、笑って泣ける爽快ストーリー。
相変わらずキャラクターが濃いメンツばっかりですが
特に真島の存在感には凄まじいものが。
色白で長身のイケメンなのに、性格はひん曲がっていて、成績も悪い。
教室でアニメの設定本を読んでいる辺り、ツワモノにも程があります。
2巻から登場する武田さんとの絡みも最高。
このふたりが悪戦苦闘しながら腐女子対象のホモマンガを描き上げる回は、
多少同人の知識がある人なら大笑いすること間違いなし。
また、その次の学園祭の演劇の回も面白すぎます。
個人的には、校内をデモンストレーションの為に衣装を着て歩いている時
ライバルの3年C組にはち合わすシーンが爆笑ものでした。
これまでのよしながさんの作品から考えると、かなりライトな口当たりにはなっていますが
思春期特有の不器用さを丁寧に描写するのはもちろんのこと、
春太郎の病気にまつわる影、更に教師同士の不倫問題(シゲ・・・!)など
単なる学園漫画におさまっていないことは確か。
よしながふみ初心者にもオススメしたい作品。


「西洋骨董洋菓子店」全4巻

ドラマのイメージしかなかったので、最初は敬遠していたのだけど
友人に借りて読んでみて、一気に引き込まれました。結局全巻揃えた。
ドラマは原作とはかなり違うもので、漫画はずっとハードで深い。
住宅街にひっそりと佇む、真夜中まで営業する変わったケーキ屋を舞台に
それぞれの登場人物のストーリーが一話完結式に綴られていく。
メインの登場人物は、ヒゲ面で天才的な接客の才能を持つ店長・橘と、
伝説的なパティシエでありながら、”魔性のゲイ”であるため店を転々としてきた小野、
元世界チャンプのボクサーで、パティシエ見習いとして働くエイジ、
幼い頃から橘のお目付け役(実際は不器用で橘が面倒を見ている)の千影。

前半は”ちょっといい話”的なオムニバスが展開していくが、
回を追うごとに橘の秘密を核とした、大きなストーリーが描かれます。
4巻後半での緊張感、特に過去と現在が交錯しながら誘拐事件の犯人に迫る18話は圧巻。
もう映画を見ているような臨場感と完璧な表現力。
また、全てが解決することはないけれど、それでも日々は続いていく、
という一種の悟りに達した前向きなラストも素晴らしい。
よしながさんは常に、さりげない日常をモチーフにしているけど、
単なるほのぼの漫画に終わることなく、読後に感慨深ささえ感じさせる。
まさに日常の一コマ、というより人生の一コマを描き切る力量の持ち主だなあと感心させられます。


「愛すべき娘たち」

雑誌”メロディ”に連載された5つの連作を収録。
この作品でも、メインの登場人物を中心にそれぞれの物語がオムニバスとなっています。
ただしタイトルどおり、全て女の生き方、愛し方がテーマ。
個人的には、不器用で垢抜けない大学生が、講師を無理矢理襲う(笑)第2話と
母娘間の物語が静かに完結する最終話が特にお気に入り。
また、こころが美しい故に結婚できない女性を主人公に、希有な主題に挑んだ第3話は、
読書雑誌”ダヴィンチ”でも絶賛されていました。
「恋をするって人を分け隔てるということじゃない」
というセリフ・・・凄まじいです。
あと毎度のことだけど、よしながさんは日常的なシーンを描くのが本当に上手い。
お葬式のざわつき感やら、地下鉄の雰囲気、デパ地下でお歳暮を選ぶ様子など。
料理が登場するシーンも多くて涎が垂れそうになる。
最初と最後の話が絶妙にリンクしていて、思わずため息がこぼれてしまうラストも見事。


「こどもの体温」

これもそれぞれ繋がりのあるオムニバス作品集。
第3話「僕の見た風景」が雑誌で紹介されてたのが印象的で読みたくて仕方なくて。
事故で下半身不随になってしまった男・黒田と、その事故のきっかけをつくってしまった綾小路。
ふたりは元々仲のいい同級生だったのが、その日を境に主人と奴隷の関係に変わる。
黒田は、綾小路を酷いくらい厳しく扱いますが、でも黒田の気持ちもわかるんです。
後半、ふたりの関係が徐々に変わって、事故で死んだもうひとりの友人の墓の前で
黒田がとある告白をする・・・そこから意外な展開になっていくんだが
時間のとまったような感覚がよく表現されてる。感動的ですらあるし。
死んだ妻の実家を訪れた主人公と、義父の夜中のやりとりを描く第2話「ホームパーティー」もいい。
翌日のパーティーの為の料理をつくりながら、亡妻の思い出が甦っていくさまが優しい。
しかもその料理がめちゃくちゃ美味そうなんだわ!
冷蔵庫の残り物でどんどんつくっていくんだけど、涎出ます。読んで作りました私。
たまねぎ、セロリ、にんじん、じゃがいも・・・野菜いっぱいのミネストローネに
鶏肉ににんにくとパン粉をまぶしてオーブンで焼いたもの、
つけあわせのいんげんのソテーには最高級のバルサミコ酢を加えて、
甘めのシーフードサラダに砂糖がけのパウンドケーキ・・・ 素晴らしい!!


「彼は花園で夢を見る」

遠い異国の物語。
流れの楽師兄弟が、男爵の屋敷にやってきたことから話は始まる。
やはり連作ですが、主人公は一貫してます(やや例外あり)
どのお話も淡々としつつ良い話ですが、特に男爵の昔のストーリーは良かった。
”私は生涯で2度だけ本当の恋をした”で始まって終わるせつないおはなし。
異国の情景もあいまって、全体的に少しかなしい感じの作品ですが
最後は素敵にハッピーエンドです。心あたたまるラストです。




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